「EBITDAについて語る人間に出会ったら、私はいつも『EBITDA』という言葉を『Bullshit Earnings(デタラメな利益)』に置き換えて聞くようにしている」
チャーリー・マンガーは、ウォール街の金融工学や、企業が自らを実態以上によく見せようとする会計上のごまかしに対して、常に容赦のない批判を浴びせてきた。中でも彼が最も激しく嫌悪したのが、ハイテク企業やプライベート・エクイティ(PE)ファンドが好んで使う「EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)」という指標である。
減価償却費は「本当のコスト」である
EBITDAは、金利支払い、税金、そして減価償却費を引く前の「大まかなキャッシュフロー」を示す指標として広く使われている。企業は「減価償却費は現金の流出を伴わない会計上の数字だから、EBITDAこそが真の稼ぐ力だ」と主張する。
しかし、マンガーにとってこの論理は完全なるペテンだった。
減価償却費をコストから除外してもいいと考えている経営者は、歯の妖精(Tooth Fairy)の存在を信じているようなものだ。工場やソフトウェアは必ず劣化する。それを維持・更新するためには、必ず後で莫大な現金が必要になる。それは間違いなく『本物のコスト』なのだ。
2026年現在、多くの赤字テック企業が「EBITDAベースでは黒字化を達成した」と声高に叫んでいる。しかし、その裏では、従業員への莫大な株式報酬(SBC)や、サーバー設備の減価償却費といった「都合の悪いコスト」が除外されているケースが後を絶たない。
マンガーの批判は、「見た目の数字を良くするために作られた独自の指標(Non-GAAPなど)を絶対に信用するな」という強烈なメッセージだ。企業が複雑な指標を持ち出してきた時、それは何かを隠そうとしているサインである。
現金は嘘をつかない
マンガーとバフェットが常に注目してきたのは、複雑な調整が加えられた利益ではなく、「オーナー利益(Owner Earnings)」と呼ばれる、フリーキャッシュフローに近いシンプルな数字だ。
「会計は、ビジネスの言語である。しかし、多くのCEOはその言語を使って詩(フィクション)を書こうとする」。
投資家が企業を評価する際、EBITDAという魔法の言葉に騙されてはいけない。本当に重要なのは、そのビジネスが最終的に「いくらの本物の現金を株主のポケットに残せるか」だけなのだ。