「狂気には決して参加するな。たとえ隣人がそれで大金持ちになっていたとしてもだ」
2023年11月にこの世を去ったチャーリー・マンガーは、生涯を通じて「馬鹿なことを避ける」ことに執念を燃やした投資家だった。彼のアプローチは「いかに賢く振る舞うか」ではなく、「いかに愚かな過ちを犯さないか」に焦点が当てられていた。
隣人の大儲けが理性を狂わせる
市場にバブルが到来した時、投資家の理性を最も激しく破壊するのは、マクロ経済の悪化でも、企業業績の低迷でもない。「自分より明らかに頭の悪い隣人が、得体の知れない投資(仮想通貨やミーム銘柄など)で大儲けしている」という事実である。
何の努力もせずに大金を手に入れた人間を横目に見ながら、自分がコツコツと保守的な投資を続けることほど、人間の精神にとって過酷なことはない。しかし、その誘惑に負けた時が、破滅への第一歩なのだ。
マンガーは、これを「羨望(Envy)」という人間の根源的な心理バイアスとして警戒した。嫉妬は投資判断を曇らせ、本来なら絶対に取らないような無謀なリスクを取らせる。
AIブームや暗号資産の急騰など、2026年の市場にも「隣人を大金持ちにする狂気」はそこかしこに転がっている。SNSを開けば、一夜にして億り人になったという報告が溢れている。
しかし、マンガーの教えは極めて冷徹だ。「彼らはたまたまロシアンルーレットで引き金を引いて弾が出なかっただけであり、あなたが次に引き金を引いて生き残る保証はない」。 狂気の中に飛び込むことを拒否し、愚直に価値のあるビジネスの所有者であり続けること。それこそが、長期にわたって生き残るための唯一の道である。
「逆張り」ではなく「不参加」という選択
マンガーが提案した解決策はシンプルだ。狂気に対して「空売り」を仕掛けて戦う(逆張りする)のではなく、ただ「参加しない(無視する)」ことである。
「世の中には、我々には難しすぎる問題がたくさんある。我々はそれを『Too Hard(難しすぎる)箱』に入れて、二度と見ないだけだ」。
どれほど儲かりそうに見えても、自分の理解の範疇を超えた狂気には近づかない。この徹底した自己規律こそが、マンガーとバフェットを半世紀以上にわたって金融界の頂点に立たせ続けた最大の理由である。