「決してアメリカに逆張りをしてはいけない(Never bet against America)」
これは、ウォーレン・バフェットが株主への手紙や年次総会で何度も繰り返し語ってきた、彼の投資哲学の根幹をなす言葉である。2026年、政治的な分断が深まり、財政赤字が膨張し、一部で「アメリカ衰退論」が囁かれる中でも、このオマハの賢人の信念は微塵も揺らいでいない。
「アメリカの自己修復力」という最大の競争優位性
バフェットがアメリカを信じる理由は、単なる愛国心ではない。資本主義のシステムがもたらす「自己修復力」と「イノベーションの土壌」に対する極めて合理的な評価に基づいている。
私が生まれた1930年以来、アメリカは幾度となく危機を経験してきた。大恐慌、世界大戦、冷戦、テロ、そして金融危機。しかし、その度にこの国は立ち直り、以前よりも強く、豊かになってきた。アメリカのダイナミズムを過小評価するのは、常に敗者の戦略だった。
彼は、アメリカの法制度、起業家精神、そして失敗を許容する文化が、世界中の資本と頭脳を引き寄せ続ける最強の「堀(モート)」であると考えている。マクロ経済の短期的なノイズ(金利の上下や選挙結果)によって、この巨大な成長エンジンが完全に停止することはない、というのが彼の見立てだ。
バフェットのこの言葉は、「何も考えずに米国株のインデックスを買えばいい」という単純な意味ではない。彼は現金比率を高めながらも、「長期的にはアメリカ経済は成長するのだから、絶好の買い場が来たら全力でアメリカの優良企業を買う」という姿勢を崩していないのだ。
短期的なマクロの悲観論に飲まれ、市場から完全に撤退してしまうことの危険性を、この言葉は教えてくれる。ピンチは常に、アメリカの回復力に投資するための最高のチャンスとして現れる。
時間は素晴らしい企業の友である
バフェットは、マクロ経済の予測に時間を使わないことで知られている。「来年、経済がどうなるかは誰にもわからない。しかし、10年後、20年後にアメリカが今より豊かになっていることには多額の賭けができる」からだ。
短期的な変動に一喜一憂するのではなく、長期間にわたって複利を働かせること。アメリカという巨大なシステムに「順張り」し続けることこそが、最もシンプルで確率の高い投資戦略である。
世界情勢がどれほど不透明に見えようとも、「Never bet against America」というバフェットの指針は、投資家にとっての強力な北極星であり続けている。