「バリュー投資家とモメンタム投資家は、互いを軽蔑し合っている。しかし学術的には、この2つを組み合わせたポートフォリオが、どちらか一方よりも優れたリスク調整後リターンを生むことが証明されている」

クリフ・アスネスは、シカゴ大学でユージン・ファーマの指導のもとPhDを取得し、運用資産980億ドルのAQR Capital Managementを共同創業した。彼は「学術研究を投資に応用する」ことに生涯を捧げている。

バリューとモメンタムの「不思議な相性」

バリューは「安い株を買い、高い株を売る」。モメンタムは「上がっている株を買い、下がっている株を売る」。一見すると正反対だ。しかし、データは両者の相関が低い(時にマイナス)ことを示している。つまり、バリューが不調の時にモメンタムが好調で、逆もまた然り。

— Cliff Asness, "Value and Momentum Everywhere"

実証データ(1927-2023年、米国株式市場):

  • バリューファクターの年平均超過リターン: +4.8%
  • モメンタムファクターの年平均超過リターン: +7.3%
  • 両者を50:50で組み合わせたポートフォリオ: +6.5%(ただしリスクは各単独より大幅に低い)

ファクター投資の4大ファクター

AQRが重視するファクターは4つだ。

  1. バリュー: 本質的価値に対して割安な資産を買う
  2. モメンタム: 直近6-12ヶ月で上昇トレンドにある資産を買う
  3. キャリー: 保有しているだけで収益が得られる資産を持つ(高配当株、高金利通貨)
  4. クオリティ: 収益性が高く、安定した成長を持つ企業を買う
筆者の見立て

アスネスのファクター投資は、個人投資家にとっても実践可能だ。

簡単なファクター投資の始め方:

  • バリュー: PBR1倍以下、配当利回り4%以上の銘柄を選ぶ
  • モメンタム: 52週高値の近くにある銘柄を選ぶ(上昇トレンドの確認)
  • クオリティ: ROE15%以上、自己資本比率50%以上の銘柄を選ぶ

これら3条件をすべて満たす銘柄は「バリュー+モメンタム+クオリティ」の三重ファクターを持ち、統計的に最も高いリスク調整後リターンが期待できる。

日本のファクターETF:

  • NEXT FUNDS 日本株バリュー(1498)
  • iShares MSCI Japan Quality(JPQL)

ファクター投資は「今月のホットな銘柄」を追いかけるのではなく、統計的に優位性のある特性を持つ銘柄を体系的に選ぶアプローチだ。

バリューの「冬の時代」

アスネスは2020年代初頭に「バリューの死」が叫ばれた時も、信念を曲げなかった。「バリューが不調なのは、バリューが機能しないからではない。バリューが嫌われているからだ。そして、嫌われている時こそバリューが最も魅力的になる」

2022-23年にバリュー株はグロース株を大幅にアウトパフォームし、アスネスの信念は報われた。