「ほとんどの投資家のポートフォリオは、見た目ほど分散されていない。10銘柄持っていても、すべてが株式市場のリスクに連動しているなら、実質的には1つの賭けだ」

アスネスの「真の分散投資」論は、従来の「銘柄数を増やせば分散できる」という常識を覆す。重要なのは銘柄の数ではなく、リターンの源泉(ドライバー)の多様性だ。

「偽の分散」と「真の分散」

日本株10銘柄を持っているとしよう。トヨタ、ソニー、三菱UFJ、ファナック、東京エレクトロン……。これは「10銘柄に分散」しているように見えるが、実際にはすべて「日本経済と円のリスク」という1つのドライバーに依存している。日経平均が-30%なら、この10銘柄もほぼ全部下がる。これは分散ではない。

— Cliff Asness

真の分散の4つの軸

AQRが推奨する分散の軸:

  1. 資産クラスの分散: 株式、債券、コモディティ、不動産、金
  2. 地理的分散: 米国、欧州、日本、新興国
  3. ファクターの分散: バリュー、モメンタム、キャリー、クオリティ
  4. 時間の分散: 一度に投資せず、ドルコスト平均法で時間を分散

「真の分散とは、ある資産が下がった時に別の資産が上がる、あるいは少なくとも下がらないことだ。すべてが同時に下がるなら、それは分散ではない」

2022年の教訓

2022年は「偽の分散」が暴かれた年だった。株式(S&P500: -19%)と債券(米国長期債: -31%)が同時に暴落した。伝統的な「60/40ポートフォリオ」(株60%+債40%)は-17%の損失を記録——1937年以来最悪だった。

しかし、AQRの推奨する「真の分散ポートフォリオ」(株+債+コモディティ+トレンドフォロー)は2022年にプラスのリターンを維持した。

筆者の見立て

日本の個人投資家が「真の分散」を実現する具体的なポートフォリオ案:

資産クラス比率商品例
日本株20%TOPIX ETF (1306)
先進国株25%eMAXIS Slim 先進国株式
新興国株10%eMAXIS Slim 新興国株式
先進国債券15%eMAXIS Slim 先進国債券
10%金ETF (1540)
REIT10%J-REIT ETF (1343)
現金10%普通預金 or MRF

このポートフォリオは、6つの異なるリターンドライバーを持ち、どれか1つが大きく下落しても、ポートフォリオ全体への影響は限定的だ。

年1回のリバランス(元の比率に戻す)を行うだけで、自動的に「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買う」ことになる。

相関の変動に注意

アスネスが警告するのは、相関は一定ではないということだ。通常時に低相関の資産でも、危機時には相関が急上昇し、「すべてが一緒に下がる」現象が起きる。

「真の分散は、通常時ではなく、危機時にテストされる。だからこそ、金やトレンドフォロー戦略のように、危機時に逆方向に動く資産を組み込むことが重要だ」