「200日移動平均線の下では、絶対にロング(買い持ち)をしない。これは私のキャリアを救ったルールだ」

ポール・チューダー・ジョーンズは、1987年のブラックマンデーでS&P500の暴落を予測し、空売りで莫大な利益を上げたことで伝説になった。運用資産380億ドルのTudor Investment Corpを率いる彼の投資スタイルは、マクロ分析+テクニカル分析+厳格なリスク管理の三位一体だ。

200日移動平均線の意味

200日移動平均線(200-day MA)は、過去200営業日の終値の平均だ。これが「ただの線」ではなく重要な理由がある。

200日移動平均線は、機関投資家の「コスト基準」に近似する。年金基金、生保、投信は長期保有が基本であり、彼らの平均購入価格は過去200日の平均付近に収束する。株価がこの線を下回ると、彼らは「含み損」に転じ、追加購入を控える。買い手がいなくなれば、株価はさらに下がる。

— Paul Tudor Jones

歴史的データ:

  • S&P500が200日MAの上にある時の年平均リターン: +12%
  • S&P500が200日MAの下にある時の年平均リターン: -4%
  • 2008年のリーマンショック: S&P500は200日MAを下回った後、さらに-40%下落

ブラックマンデーの教訓

1987年10月19日、ダウ工業平均は1日で22.6%暴落した。しかしジョーンズはこの日、空売りポジションで62%のリターンを記録した。

彼がブラックマンデーを予測できた理由は3つある。

  1. 1929年との類似パターン: チャートの形状が1929年の暴落前と酷似
  2. ポートフォリオ保険の普及: 当時流行していた「ポートフォリオ保険」が下落を加速させる構造
  3. バリュエーションの極端な過熱: PERが歴史的高水準に達していた

「私は預言者ではない。ただ、過去に同じパターンが起きた時に何が起きたかを知っていただけだ」

筆者の見立て

200日移動平均線ルールは、個人投資家にとって最も実践しやすいリスク管理手法の一つだ。

具体的な活用法:

  1. S&P500(またはTOPIX)が200日MAの下にある時: 新規の株式購入を控え、現金比率を高める
  2. 200日MAを上に抜けた時: 段階的に株式比率を戻す
  3. 個別株にも応用: 保有銘柄が200日MAを明確に下回ったら、ポジション縮小を検討

完璧な指標ではないが(レンジ相場ではダマシが多い)、大暴落の初動を回避するという一点においては、過去70年間の統計が有効性を裏付けている。

日本株(日経225)にも応用可能だ。Yahoo Financeで「^N225」の200日MAを確認するだけで、月に1回のチェックが可能。

「防御は最大の攻撃」

ジョーンズの投資哲学で最も重要なのはリスク管理だ。「利益は自分で管理できないが、損失は管理できる。損失を管理することが、長期的に利益を最大化する唯一の方法だ」

彼のルール:

  • 1回のトレードでポートフォリオの2%以上をリスクにさらさない-3連敗したら、トレードサイズを半分にする-月間で-10%になったら、ポジションを全清算して1ヶ月休む

「生き残ることが最優先だ。生き残りさえすれば、チャンスは必ずまた来る」