「我々は歴史上最大の通貨供給の拡大を目撃している。これがインフレを引き起こさないと考えるのは、重力の法則を否定するのと同じだ」

2020年5月、パンデミック直後のFRBの大規模な量的緩和を見て、ジョーンズは「The Great Monetary Inflation(偉大なる通貨インフレ)」と題するレターを投資家に送付した。この予測は完璧に的中し、2022年にCPIは40年ぶりの高水準に達した。

ジョーンズのインフレ・プレイブック

ジョーンズがインフレ環境で推奨する「インフレ・プレイブック」は明快だ。

インフレが来る時、最悪の資産は長期債と現金だ。最良の資産は、供給が制限されているもの——金、コモディティ、ビットコイン、そして優良企業の株式だ。

— Paul Tudor Jones, 2020年5月

インフレ環境下の資産パフォーマンス(過去データ):

資産クラスインフレ5%超の年平均実質リターン
+7.5%
コモディティ+9.2%
不動産(REIT)+4.1%
株式+1.2%
長期国債-5.3%
現金-3.8%

なぜビットコインを買ったのか

2020年10月、ジョーンズはCNBCで「ポートフォリオの1-2%をビットコインに配分している」と公言した。伝統的なマクロ投資家がビットコインを認めたことは、暗号資産業界に大きな衝撃を与えた。

ジョーンズのビットコイン投資の論理:

  1. 供給制限: ビットコインの総発行量は2,100万枚に固定されている
  2. 「デジタルゴールド」: 金と同様に、中央銀行が増刷できない資産
  3. 初期段階: 金の時価総額12兆ドルに対し、ビットコインは当時0.5兆ドル——上昇余地が大きい

「ビットコインは金の1/20の時価総額だ。もし金と同じ役割を果たすなら、ここから20倍になる可能性がある。もしそうならなくても、損失は1-2%に限定される。この非対称性が魅力だ」

筆者の見立て

ジョーンズの「インフレ・プレイブック」は、2021-23年のインフレ局面で圧倒的に正しかった。金は2,400ドルの史上最高値を更新し、コモディティは急騰、長期債は歴史的な暴落を記録した。

日本の投資家への含意:日本はようやくインフレの時代に入った。2%前後のインフレが定着すれば、ジョーンズのプレイブックはそのまま日本にも適用できる。

具体的なアクション:

  • 長期債の比率を下げる: 日本国債ファンドは実質リターンがマイナス
  • 金・コモディティを追加: ポートフォリオの5-15%
  • ビットコインを少額保有: ポートフォリオの1-3%(損失許容範囲内で)
  • 不動産を検討: インフレ環境下では借金して不動産を買うことが合理的(固定金利の場合)

ジョーンズは「完璧なインフレヘッジは存在しない。しかし、何もしないことが最も確実にインフレに負ける方法だ」と語っている。

「通貨の歴史」を読め

ジョーンズが推奨する書籍は、投資の教科書ではなく通貨の歴史書だ。「ワイマール共和国のハイパーインフレ、ジンバブエのドル崩壊、アルゼンチンのペソ危機——これらを学べば、通貨を刷ることの帰結が理解できる」

歴史を知る者は、政府が「インフレは一時的だ」と言った時に、笑うのではなく備えることができる。