「マグニフィセント7への集中度は、2000年のドットコム・バブルを超えている。AIは革命的な技術かもしれないが、革命的な技術が常に良い投資になるわけではない」
2024年初頭のシンガーの投資家レターは、AI関連株への熱狂に冷水を浴びせるものだった。
「ドットコム」との既視感
シンガーが懸念するのは、AIそのものではなく、バリュエーションだ。
1999年にもインターネットは革命的だった。その評価は正しかった。しかし、インターネットの革命性と、インターネット株の株価が正当化されるかは全く別の問題だ。Cisco、Intel、Sun Microsystems——すべて素晴らしい企業だったが、2000年のピーク株価を取り戻すのに15年以上かかった。あるいは永遠に戻らなかった。
2024年初頭のデータ:
- S&P500に占めるマグニフィセント7の比率: 約30%(史上最高)
- エヌビディアのPER: 約65倍
- 2023年のS&P500リターン: +24%、ただしマグ7を除くと+10%以下
集中リスクの本質
シンガーが「バブル」と呼ぶ理由は単純だ。インデックスファンドの隆盛が、同じ銘柄への資金集中を自動的に加速させている。S&P500のインデックスファンドに1ドル投資すれば、その30セントが自動的にマグ7に流入する。これは「投資判断」ではなく「機械的な資金流入」だ。
そして、この構造は下落時にも同じように機能する。マグ7が下がれば、インデックスファンドは自動的に売り圧力を生む。
シンガーの警告は、S&P500のインデックスファンドに「全賭け」している日本の個人投資家に特に重要だ。iDeCoやつみたてNISAで「全世界株」や「S&P500」に投資している人は多いが、実質的にはマグ7に30%賭けていることを認識しているだろうか。
分散投資のつもりが、実は超集中投資になっている——これがシンガーの指摘する構造的なリスクだ。対策として、等加重型のインデックスファンド、バリュー株ファンド、あるいは米国以外の地域への分散を検討すべきだろう。
もちろん、シンガーが間違っている可能性もある。AIバブルが「バブルではなく構造変化」だった場合、彼の悲観論は機会損失になる。しかし、リスク管理の観点からは、「もしバブルだった場合」に備えておくことに損はない。
ヘッジファンドの王者の矛盾
皮肉なことに、エリオット自身も2024年にはテック株のポジションを持っていた。シンガーは「バブルだと分かっていても、上昇の途中では利益を取る」というプラグマティズムを持っている。
問題は「いつ降りるか」だ。シンガーの答えは明確だ。「バブルの頂点で売ることは不可能だ。だから、少し早く降りることを受け入れろ」。