「現在我々が直面しているインフレは、単に需要が強すぎるから起きているのではない。米中対立や戦争によって、世界の『供給チェーン(サプライチェーン)』そのものが破壊され、再構築を余儀なくされているから起きているのだ。これはもはや経済の問題ではなく、物理的・地政学的な『戦争』である」

ゾルタン・ポジャールは、パンデミック後のインフレを分析する際、中央銀行の金融政策(金利操作)だけではこのインフレは決して解決できないと断言した。

物理的制約という巨大な壁

金利を上げれば、人々の消費意欲(需要)を冷やすことはできる。しかし、それはインフレの根本的な解決にはならない。

FRBのパウエル議長がどれだけ金利を引き上げても、それによって『台湾の半導体工場』がアメリカに瞬間移動するわけではない。ロシアの天然ガスがヨーロッパに届くようになるわけでもない。供給のボトルネックを解消するためには、自国内に工場を建て直し、兵器を増産し、エネルギー網を再構築するという『莫大な資本と時間』が必要になる。その過程で発生する構造的なインフレ(戦争インフレ)は、数年間は絶対に収束しない。

— Zoltan Pozsar

ポジャールによれば、我々は「グローバリゼーション(安価な労働力とエネルギーの時代)」の終焉に立ち会っており、これから数年間は「高コスト・高金利・高インフレ」の新しい体制に強制的に適応しなければならないのだ。

筆者の見立て

「もうすぐ利下げされて、元の低インフレ時代に戻るだろう」という甘い期待は、ポジャールの指摘する物理的・地政学的な現実の前では打ち砕かれる。 防衛費の増額、サプライチェーンの国内回帰(フレンド・ショアリング)、脱炭素への莫大な投資。これらはすべて「強烈なインフレ圧力」である。我々投資家は、この構造的なインフレを前提とし、エネルギー株やインフラ関連企業、軍需産業など「新しい現実(供給の再構築)」から恩恵を受けるセクターにポートフォリオを適応させるべきである。