「ロシアのウクライナ侵攻と、それに伴う西側諸国の金融制裁(ロシア外貨準備の凍結)は、ルビコン川を渡る行為だった。もはや『他国の銀行口座にある数字(ドルやユーロ)』は安全な資産ではない。我々は今、金や原油といった『現物の資源(商品)』が通貨の裏付けとなる『ブレトンウッズ3.0』の誕生を目撃している」
元NY連銀の官僚であり、クレディ・スイスのスター・ストラテジストとしてウォール街の「金融配管(Financial Plumbing)」を知り尽くすゾルタン・ポジャール。彼が執筆した一連のレポートは、世界中のヘッジファンドや中央銀行の思考を根底から揺さぶった。
内部のお金から、外部のお金へ
ポジャールは、世界の通貨システムが根本的な転換点を迎えていると指摘する。
これまでの世界(ブレトンウッズ2.0)は、米国債やドルという『内側のお金(誰かの負債)』によって回っていた。しかし、制裁によってそれが一瞬で無価値にされるリスクを見た東側諸国(中国やロシア、中東)は、金(ゴールド)やコモディティという『外側のお金(誰の負債でもない実物資産)』へと資産を急速にシフトさせている。これは、インフレが構造的に高止まりし、資源を持つ国が世界の金融覇権を握る時代の到来を意味する。
「我々のお金(ドル)が、彼らの問題になる」時代から、「彼らの資源(コモディティ)が、我々の問題になる」時代へのシフト。ポジャールのこの予言は、現在の地政学的な分断を完璧に説明している。
我々は数十年間、「ドルと米国債」を持っていれば世界中どこでも安全だという常識の中で生きてきた。 しかし、ポジャールの『ブレトンウッズ3.0』の世界観に立てば、投資のポートフォリオは根本的な見直しを迫られる。ペーパーアセット(株や債券)だけでなく、ゴールド、エネルギー、農産物といった「地政学的な武器となる実物資産(コモディティ)」を保有することが、新たな世界秩序における必須の生存戦略となるのだ。