「株を買うのは良いが、オプションを使えばもっと賢く買える。コール・オプションは、リスクを限定しながらアップサイドを無限に取れる。プット・オプションは、市場が崩壊した時の生命保険だ」

アイカーンは単なる「企業乗っ取り屋」ではない。彼はオプション市場の熟練者でもあり、大量の株式を取得する前にコール・オプションで経済的なエクスポージャーを確保することで知られている。

オプションを使った買収戦略

企業の株を5%買うのに100億円必要だとしよう。コール・オプションを使えば、10億円のプレミアム(手数料)で、同じ5%の経済的権利を持てる。もし株価が上がれば、オプションを行使して株を取得する。下がれば、10億円の損失で済む。

— Carl Icahn

この戦略のメリット:

  1. レバレッジ: 少ない資本で大きなポジションを取れる
  2. 損失の限定: 最大損失はプレミアムに限定
  3. 匿名性: オプション取引は株式のように大量保有報告の対象にならない場合がある
  4. 柔軟性: 状況に応じて行使するかしないかを選べる

ヘッジとしてのプット・オプション

アイカーンは強気ポジションを取る一方で、常にプット・オプションでダウンサイドをヘッジする。

「私のポートフォリオは常に保険付きだ。家を買ったら火災保険をかける。株を買ったらプットを買う。これは臆病ではなく、合理的なリスク管理だ」

2020年のコロナショック前に、アイカーンは市場全体に対するプット・オプションを大量に保有していた。暴落で巨額の利益を得た一方、保有株の下落は限定的だった。

筆者の見立て

オプション取引は個人投資家にとって「上級者向け」と思われがちだが、基本的な使い方は理解すべきだ。

個人投資家が使える基本的なオプション戦略:

  • プロテクティブ・プット: 保有株のヘッジとして、プット・オプションを購入。株価下落時の損失を限定
  • カバード・コール: 保有株に対してコール・オプションを売却。プレミアム収入で利回りを向上
  • LEAPSコール: 1-2年先の長期コール・オプションで、少額の資本で優良株へのエクスポージャーを確保

日本では、日経225オプションが個別株オプションより流動性が高い。SBI証券やマネックス証券でオプション取引が可能だ。

ただし注意:オプションの売り手になることは、無限の損失リスクを伴う。初心者は買い手に徹すること。損失はプレミアムに限定される。

オプションのマスター

アイカーンがオプションに精通している理由は、彼のキャリアの原点にある。1960年代、ウォール街でオプション・ブローカーとしてキャリアをスタートさせた。「オプションの価格形成を肌で理解している」ことが、他の投資家にはない武器になっている。

「オプションを理解しない投資家は、片手を縛って戦っているようなものだ」