「私は経済学者の予測を決して信用しない。なぜなら、彼らの予測は常に『バックミラー』を見ながら行われているからだ。未来を知りたければ、市場そのものの声(プライスアクション)を聴くべきだ」

スタンレー・ドラッケンミラーは、マクロ経済のトップ投資家でありながら、エコノミストのレポートを軽視することで知られている。彼が最も信頼する情報源は「市場の価格の動き(内部情報)」そのものだ。

市場は常に先を見ている

ドラッケンミラーによれば、株式市場や債券市場は、現実の経済統計(GDPや雇用統計)よりも数ヶ月から半年早く未来を織り込み始める。

経済が良いのに株価が下がり始めた時、あるいは経済が最悪なのに株価が底打ちして上がり始めた時、絶対に『市場が間違っている』と思ってはならない。市場は、あなたや私、そしてFRBすら気づいていない未来のニュースをすでに知っているのだ。

— Stanley Druckenmiller

彼は、自分の仮説と市場の動きが矛盾した時、決して市場と戦わない。市場が自分の予想外の動きをした時は、「自分が何か重要なことを見落としているサイン」だと謙虚に受け止め、即座にポートフォリオを調整する。

筆者の見立て

我々が陥りやすい罠は、ニュースを見てから株を売買することだ。「不景気になったから株を売ろう」と考えた時、市場はすでにその不景気を織り込み終わり、次の回復期に向けて上昇を始めていることが多い。

ドラッケンミラーの教えは、「ニュースをトレードするのではなく、価格の反応をトレードせよ」ということだ。悪いニュースが出たにもかかわらず株価が下がらない時、それは市場の内部エネルギーが強気(ブル)に転換した決定的なシグナルなのである。

リーディング・インジケーター(先行指標)を探せ

ドラッケンミラーは、市場全体を見るだけでなく、特定のセクター(例えば、住宅株、銅の価格、輸送株など)の動きを「炭鉱のカナリア(先行指標)」として注視する。

「経済全体がどうなるかを知りたければ、金利に最も敏感な産業がどう動いているかを見ればいい」。

市場の内部の動きを誰よりも早く察知し、エコノミストがそれに気づいてレポートを書く頃には、すでに巨大な利益を確定させている。これが「マクロの魔術師」と呼ばれる男の真の姿である。