エヌビディアの株価は、過去 3 年で最も「米中関係」に依存している大型株である。

2026 年 4 月 16 日、米国商務省が AI チップ「H20」の対中輸出を実質禁止した。市場の反応:

  • エヌビディア株価:-9.2%(1 日で時価総額 4,100 億ドル消失)
  • 関連株(AMD・ASML・東京エレクトロン):軒並み -5〜8%
  • 中国半導体株(SMIC・華為傘下):逆に +12〜18%

これが「米中半導体冷戦・第二幕」の幕開けだ。

第一幕(2022-2024)と第二幕(2025-)の違い

項目第一幕第二幕
規制対象最先端 GPU(A100, H100)中位機 GPU + 製造装置
中国対応代替チップ模索自国 GPU 量産(華為・カンブリコン)
米国の本気度制裁 + 抜け穴容認抜け穴も塞ぐ徹底体制
サプライチェーン中国経由でも流通可第三国経由も阻止
影響範囲半導体産業のみAI・自動車・IoT 全体

最重要の違いは、中国が「待つ」のではなく「自分で作る」モードに入ったことだ。

エヌビディアの中国売上、半減シナリオ

エヌビディアの売上構成(2025 年通期 1,300 億ドル):

  • 米国:48%
  • アジア太平洋(中国除く):22%
  • 中国:10%(約 130 億ドル)
  • 欧州:15%
  • その他:5%

2026 年に H20 が完全に止まれば、中国売上は推定 60 億ドル前後まで縮小。マイナス 70 億ドルが、エヌビディアの粗利益から消える。

これは「成長企業の成長率がやや鈍化する」程度の話ではない。過去 3 年で最大の地域別構造変化である。

筆者の見立て
エヌビディア株を持っている個人投資家が、いま気にすべきは「米中関係の改善期待」を捨てることだ。トランプ政権下で、対中半導体規制は**緩和されない**。むしろ強化される。

ドラッケンミラー氏がエヌビディアから Amazon・Meta にローテーションした理由も、ここにある。チップを作る側より、チップを使って稼ぐ側のほうが、地政学リスクが少ない

中国の自前 GPU、本物か

中国は「自前 GPU」を量産化しつつある:

  • 華為(Huawei)Ascend 910C:H100 比 60% 性能、年産 100 万個目標
  • カンブリコン MLU290:訓練用、商用化進行中
  • CXMT メモリ:HBM3 量産開始

「H100 の代替にはならない」が、「中国国内の AI 需要を内製で満たす」レベルには到達しつつある。中国の AI モデル(DeepSeek 系)は、すでに自国 GPU で訓練・推論されている。

つまり、米国が中国に売れない期間が長引くほど、中国は自前で完結する。米国の規制が、皮肉にも中国の自立を加速させる——これが冷戦の構造である。

筆者の見立て
家計レベルで考えるべきは 3 つ:

1. 米国半導体一極集中の見直し:NVIDIA・AMD への過剰な期待を、Amazon・Meta・Alphabet 等の「AI 利用側」に分散

2. 中国 AI セクターの動向:直接投資は難しいが、ASML・東京エレクトロン等の製造装置メーカーへの影響を追う

3. 韓国・台湾の地政学プレミアム:TSMC・SK ハイニックス・サムスンは「米国と中国の両方から欲しがられる」立場、構造的に有利

フィッツパトリック氏が空売り対象とした「AI 敗者組」とは、NVIDIA そのものではなく、NVIDIA の中国売上消失で痛む下位企業を指していた可能性が高い。


米中半導体冷戦は、長期化が前提のシナリオに入った。「来年は良くなる」を信じる時期ではない。