「2009年3月、世界の終わりが来たと全員が信じていた。銀行は倒産し、経済は崩壊し、文明が終わると言う人までいた。その時、私はすべてを賭けて銀行株を買った」
デビッド・テッパーは、2009年に単年で40億ドル(約4,500億円)の個人利益を上げ、ヘッジファンド史上最高のリターンを記録した。Appaloosa Managementの運用リターンは年平均約25%——これを30年以上維持している。
2009年のテッパー・トレード
2009年3月、バンク・オブ・アメリカの株価は$3だった。シティグループは$1。全員が「銀行は国有化される」と恐れていた。しかし私は政府の行動を分析した。政府は銀行を救済する——なぜなら、銀行システムの崩壊を許容する選択肢は存在しないからだ。であれば、$3のBofAと$1のシティは、人生最大の買い場だ。
テッパーが買った銘柄とリターン:
- Bank of America: $3 → $18(+500%)
- Citigroup: $1 → $5(+400%)
- AIG: $6 → $50(+733%)
「最悪のシナリオ」分析
テッパーの投資判断は、感情ではなく確率計算に基づいている。
「私は常に3つのシナリオを考える。最良、中間、最悪。もし最悪のシナリオでも大きな損失にならず、中間か最良のシナリオで大きな利益が出るなら、そのトレードは実行に値する」
2009年の銀行株投資の場合:
- 最悪: 政府が銀行を国有化。株式は無価値になるが、政治的にこれは極めて起こりにくい
- 中間: 政府が救済し、銀行は生き延びるが成長は鈍い。株価は2-3倍
- 最良: 経済が回復し、銀行が正常化。株価は5-10倍
確率加重期待値は明らかにプラスだった。
テッパーの「パニック時に全力買い」は、言うは易く行うは難しの典型だ。しかし、事前に準備しておけば実行可能になる。
パニック買いの事前準備:
- 現金を確保しておく: 市場が好調な時こそ、ポートフォリオの20-30%を現金で持つ
- ウォッチリストを準備: 「暴落したら買いたい銘柄」を5-10銘柄リスト化
- 目標価格を決めておく: 各銘柄について「この価格なら買う」を事前に決定
- 自動注文を設定: 指値注文を入れておけば、感情に左右されない
日本の事例:2020年3月のコロナショックで日経平均は16,000円台に暴落した。その時にトヨタ、ソニー、三菱商事を買った投資家は、2年後に2-3倍のリターンを得た。次の「パニック」は必ず来る。その時に動けるかどうかは、今の準備次第だ。
「ボールを打つ」勇気
テッパーは野球に例える。「バッターボックスに立っているだけでは点は入らない。最高のピッチが来た時に、フルスイングする勇気がなければ、何もしないのと同じだ」
多くの投資家は暴落時に「もっと下がるかもしれない」と恐れて動けない。テッパーは「底を当てようとするな。十分に安ければ買え。多少のタイミングのズレは、その後の上昇で帳消しになる」と言う。