「完璧な株は、完璧に退屈な名前をしており、さらに退屈なビジネスを行っている」
これは、1980年代にマゼラン・ファンドを世界最大のミューチュアル・ファンドに育て上げたピーター・リンチの言葉だ。2026年、市場の話題が「AI」「量子コンピューティング」「宇宙開発」といった華やかなテーマで持ちきりになっている中、リンチのアプローチは極めて異端に聞こえるかもしれない。
機関投資家が買えない「ダサい株」の強み
リンチは、ウォール街のアナリストたちがカクテルパーティーで自慢げに語るような最新のハイテク株を嫌った。代わりに彼が好んで投資したのは、廃棄物処理、葬儀屋、段ボール製造、ファストフードチェーンといった、誰もが知っているが誰も話題にしたがらない「退屈な(Boring)」ビジネスだった。
機関投資家は、顧客に説明しやすい『かっこいい株』を買いたがる。「なぜあの葬儀屋の株を買ったんだ?」と上司から詰められるリスクをプロは負いたがらない。だからこそ、そうした地味な企業は放置され、割安なままになるのだ。
リンチが指摘する「退屈なビジネス」には、いくつかの共通点がある。
- ニッチな市場を独占している(競争が少ない)
- 景気に左右されにくい(不況でもゴミは出るし、葬儀は行われる)
- ウォール街のカバーが少ない(アナリストのレポートがないため、価格の歪みが起きやすい)
現在の市場では、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる巨大テック企業に資金が極端に集中している。しかし、その陰で、コツコツとキャッシュフローを稼ぎ出し、自社株買いや増配を続けている「退屈なバリュー株」が驚くほど安いバリュエーションで放置されている。
AIは確かに世界を変えるが、その競争は血みどろだ。一方で、地方の廃棄物処理ビジネスは誰もやりたがらないが、利益率は驚異的に高い。リンチの教えは、「みんなが見ているピカピカの石よりも、誰も見向きもしない泥の中のダイヤモンドを探せ」ということだ。
「あくびが出る株」でテンバガーを狙う
リンチは、こうした退屈なビジネスを展開する企業が、着実に利益を伸ばし、やがてウォール街に「発見」された時の爆発力を熟知していた。誰も期待していない分、少しの好決算でも株価は跳ね上がりやすい。
派手なテーマ株の急落に怯えるポートフォリオの片隅に、あくびが出るほど退屈で、しかし確実にお金を稼ぎ続ける「ダサい株」を忍ばせておくこと。それこそが、市場のノイズから身を守る最高のディフェンスになるだろう。