「市場は6回の利下げを夢見ているが、現実は2-3回だろう。そして、利下げが始まっても金利はゼロに戻らない。『新しい中立金利』は3-4%だ」

2024年初頭のDoubleLine Webcastで、ガンドラック氏はこう述べた。結果的に、2024年のFRB利下げは3回(9月、11月、12月)であり、ガンドラックの予測はほぼ正確だった。

「中立金利」の上方シフト

ガンドラックが最も強調したのは、中立金利(r-star)の上方シフトだ。中立金利とは、経済を加熱も冷却もしない「ちょうど良い」金利水準のことだ。

パンデミック前の中立金利は約2.5%と推定されていた。しかし、財政赤字の構造化、労働市場の逼迫、脱グローバリゼーションのコストを考えると、新しい中立金利は3.5-4.0%だろう。つまり、Fedが利下げしても、「低金利」には戻らない。

— Jeffrey Gundlach, DoubleLine Webcast, 2024年1月

これが意味するのは、住宅ローン金利(中立金利+スプレッド)も構造的に高止まりするということだ。

  • パンデミック前の30年住宅ローン金利: 約3%
  • 2024年2月時点: 約7%
  • ガンドラックの予測する長期均衡: 5-6%

債券ポートフォリオの具体的戦略

ガンドラックの2024年戦略は明確だった。

  1. デュレーション(満期)を短めに: 長期債は金利変動リスクが大きい
  2. 投資適格社債を厚めに: 高格付けの社債は国債より利回りが高く、デフォルトリスクは低い
  3. MBS(住宅ローン担保証券)に注目: Fedが売却を進めるMBSは割安になっている

「今の環境で年7-8%のリターンを債券で狙えるのは、過去15年間なかったことだ。リスクを取って株式に投資する必要性が薄れている」

筆者の見立て

ガンドラックの「中立金利の上方シフト」論は、日本の投資家にとって極めて重要だ。もし米国の金利が構造的に高止まりするなら、以下の影響がある。

  1. 円安の長期化: 日米金利差が縮小しにくくなる
  2. 不動産市場: 日本でも金利正常化が進めば、住宅価格への下押し圧力
  3. 株式市場: 「金利のある世界」では、高PERのグロース株よりバリュー株が優位

実用的なアドバイス:日本の個人投資家は、ドル建てMMFや短期米国債ETF(BILなど)を「外貨預金の代替」として検討する価値がある。年利4-5%のドル建てリターンは、円安リスクを取る代わりに得られる確定的な収益だ。

予測の限界

ガンドラックは率直に認める。「マクロ予測は長期的にはある程度の精度を持つが、短期的には外れることが多い」。彼の2020年の株価暴落予測は外れ、2022年の金利上昇予測は的中した。

この「当たり外れのある」実績こそが、投資家として誠実な証拠かもしれない。常に的中するアナリストは存在しない。重要なのは、ロジックが筋が通っているかどうかだ。