「私はかつてビットコインに対して非常に懐疑的だった。しかし、私は間違っていた。今やそれは、明確に『デジタル・ゴールド』へと進化したと確信している」

運用資産10兆ドル(約1,500兆円)を誇る世界最大の資産運用会社、ブラックロック。そのCEOであるラリー・フィンクのこの言葉は、金融史における一つの大きな転換点として記憶されるだろう。2017年にはビットコインを「マネーロンダリングの指標に過ぎない」と切り捨てていた彼が、なぜ2026年現在、ウォール街で最も影響力のある暗号資産の擁護者となったのか。

ボラティリティの資産から、逃避への資産へ

フィンクが強調するのは、マクロ経済環境の根本的な変化である。各国の政府債務が歴史的な水準に膨張し、自国通貨(法定通貨)の価値に対する信頼が揺らぐ中、投資家は新しい「価値の保存手段」を必要としている。

政府が通貨の価値を切り下げる(インフレを起こす)政策を続ける限り、ビットコインは国際的なヘッジ資産として機能し続ける。それは特定の国の経済や政治に依存しない、数少ない純粋なグローバル資産だ。

— Larry Fink

ブラックロックが組成したビットコインETF(IBIT)への天文学的な資金流入は、この見立てが正しかったことを証明している。かつては一部の熱狂的な個人投資家のおもちゃと見なされていた暗号資産市場に、年金基金、ソブリン・ウェルス・ファンド、そして保守的な機関投資家の資金が雪崩を打って流入しているのだ。

筆者の見立て

ラリー・フィンクの「転向」を単なるビジネス上のポジショントークだと片付けるのは危険だ。彼が見ているのは、世界中の資本が「国境を越えて瞬時に移動でき、かつ供給量に上限がある資産」へと逃避していく巨大なメガトレンドである。

彼が「デジタル・ゴールド」と呼んだ意味は重い。ゴールド(金)と同じように、それ自体はキャッシュフローを生まないが、法定通貨のシステム全体が揺らいだ時に機能する『最終的な保険』として、すべてのポートフォリオに組み込まれる時代が来たことを宣言しているのだ。

次の波は「現実資産のトークン化」

さらにフィンクは、ビットコインETFの成功を「デジタル資産革命の第一段階に過ぎない」と位置付けている。次に来るのは、不動産、株式、債券といったあらゆる現実資産(RWA: Real World Assets)のトークン化である。

証券の決済が瞬時に行われ、すべての取引履歴が透明なブロックチェーン上に刻まれる世界。ウォール街の帝王が見据える未来は、単なる仮想通貨の価格上昇ではなく、金融インフラそのものの「デジタル化による完全な再構築」なのである。