「弱気相場(ベアマーケット)は、バリュー投資家にとってのクリスマスだ。しかし、多くの投資家はプレゼントを拾うどころか、恐怖で逃げ出してしまう」

市場がパニックに陥り、株価が連日下落を続ける時、我々の本能は「これ以上損をしたくない」と叫び、手持ちの株を投げ売りさせようとする。アンソニー・ボルトンは、この人間の心理的弱さを熟知していた。だからこそ彼は、暴落が起きる前に徹底した準備を行っていた。

究極の「買い物リスト(Buy List)」

ボルトンが推奨する暴落時の最大の武器は、平常時に作成しておく「買い物リスト」だ。

嵐が吹き荒れている最中に、冷静な分析を行うことは誰にもできない。だからこそ、空が晴れているうちに『もしこの素晴らしい企業が半値になったら、絶対に買う』という企業のリストを作っておくのだ。

— Anthony Bolton

このリストには、強固なバランスシート、高い参入障壁、そして優れた経営陣を持つ優良企業が並ぶ。平常時ではバリュエーションが高すぎて手が出せない企業たちだ。 そして実際に市場が暴落し、パニック売りによってそれらの優良企業の株価が「買いのターゲット価格」まで落ちてきた時、感情を完全に排除して機械的に買いを入れるのである。

筆者の見立て

「落ちてくるナイフを掴むな」という相場格言があるが、ボルトンのアプローチはこれと少し異なる。彼は無作為にナイフを掴むのではなく、「それが純金製のナイフであり、本来の価値よりも不当に安くなっていること」を事前に知っているのだ。

2026年のようなボラティリティの高い市場では、ちょっとしたニュースで市場全体が急落することがある。その際、リストを持たない投資家は恐怖に支配されて身動きが取れなくなるが、リストを持つ投資家にとっては「待ちに待ったバーゲンセール」となる。

現金という最強のオプション

買い物リストを機能させるためには、手元に「現金(キャッシュ)」という弾薬が不可欠だ。ボルトンは、市場が過熱している時には少しずつポジションを軽くし、現金比率を高めることで次の暴落に備えていた。

「現金を持っていることは、下落市場において信じられないほどの心理的な優位性をもたらす」と彼は語る。

暴落はいつか必ずやってくる。その時にあなたが恐怖に震える敗者になるか、それとも底値で優良資産を拾い集める勝者になるかは、今日のあなたが「どれだけ冷徹な買い物リストを作れるか」にかかっている。