「ドローダウン(含み損)が-5%に達したら、ポジションサイズを半分にする。-10%に達したら、さらに半分にする。市場が私の判断を否定しているのに、ポジションを維持するのは傲慢だ。相場において最も重要なのは、自分が間違っている可能性を常に認める謙虚さである」

伝説的なグローバル・マクロのヘッジファンド、ムーア・キャピタル・マネジメントを創設したルイ・ベーコンは、圧倒的なリターンと同等かそれ以上に、その「非情なまでのリスク管理」で知られている。彼は1990年の湾岸戦争時の原油・通貨トレードなどで巨万の富を築いたが、彼を真の伝説にしたのは「勝った時」ではなく、「負け戦」からの撤退の鮮やかさであった。

市場での最大の敵は「ナンピン(買い下がり)」だ。含み損が拡大しているのにさらに買い増すのは、沈む船にさらに荷物を積むようなものだ。

— Louis Bacon

ドローダウンを尊重するという哲学

投資の世界において、多くの投資家は「自分の分析は正しい。市場が間違っているのだ」と考えがちである。特にファンダメンタルズ分析に自信を持つ投資家ほど、価格が下がれば下がるほど「割安になった」と捉え、ナンピン買いを行ってしまう。しかしベーコンはこれを厳しく戒める。

価格の下落(ドローダウン)は、市場からの「あなたの前提が間違っているかもしれない」という強烈なシグナルである。ベーコンのルールは機械的かつ冷酷だ。

ドローダウンアクション
-3%ポジションを見直し、投資の前提(テーゼ)をゼロベースで再確認する
-5%ポジションサイズを自動的に50%に縮小する
-10%ポジションサイズをさらに25%に縮小する
-15%全ポジションを完全に清算し、相場から1ヶ月間離れて頭を冷やす

このルールが優れているのは、人間の「感情」や「意地」が介在する余地を完全に排除している点にある。

^GSPC

筆者の見立て:個人の防衛策としてのストップロス

ベーコンのドローダウン管理術は、プロの機関投資家だけでなく、個人投資家にとっても生死を分ける究極のルールである。特に信用取引(レバレッジ)を用いている場合、含み損に対するナンピンは文字通り「致命傷」になり得る。

例えば2024年の相場においても、いくつかの局所で「押し目」に見えた下落が、そのままトレンド転換を伴う強烈な暴落へと発展したケースがあった。「良い企業だから」「いつか戻るから」という理由で損切りを先延ばしにするのは、ベーコンに言わせれば「傲慢」以外の何物でもない。

実践的なアドバイスとしては、証券口座の機能を使って「買値から-10%に達したら自動で成行売り(逆指値注文)」を最初から設定しておくことだ。自分の意思で損を切るのが辛いなら、システムに切らせればいい。損失を小さく限定し、生き残りさえすれば、次のチャンスで必ず取り返すことができる。相場という戦場において、最大の勝利は「退場しないこと」なのだから。