「FRBが利下げすれば、長期国債の価格は上がる」。通常は正しい。だが長期金利には将来の政策金利だけでなく、インフレと大量の国債を長期間抱える対価も入る。後者が上がれば、利下げと長期金利上昇は同時に起こる。

Gundlach: 私は少なくとも2年前から、先進国の長期国債を避けるよう警告してきた。

ジェフリー・ガンドラック氏は6月の公式ウェブキャストで、先進国の長期金利が歴史的な底から上昇している点を強調した。焦点は次回のFOMCだけではない。財政赤字、粘着的な物価、エネルギー価格、通貨への信認が、10年や30年の資金を貸す投資家にどれだけ追加利回りを要求させるかだ。

長期金利は三つに分けて考える

10年国債利回りは、おおまかに三つの要素からできている。

  • 将来の実質短期金利:FRBが今後どの水準へ政策金利を動かすか。
  • 期待インフレ率:返済されるドルの購買力がどれだけ下がるか。
  • 期間プレミアム:価格変動と不確実性を10年、30年引き受ける追加報酬。

景気後退で将来の短期金利予想が下がっても、財政赤字による国債供給、インフレ再燃、買い手不足への警戒で期間プレミアムがそれ以上に上がれば、長期金利は下がらない。政策金利と長期金利は一本のロープで固定されているわけではない。

長期金利を将来の実質短期金利、期待インフレ率、期間プレミアムに分解し、債券価格への影響を示す図
利下げで一つ目が下がっても、期待インフレと期間プレミアムが上がれば、長期金利は高止まりする。

なぜ長期債ほど傷が深くなるのか

債券の価格と利回りは逆に動く。将来受け取る利息と元本が固定されているため、新発債の利回りが上がると、低い利率の既発債は値下げしないと売れない。

そこで重要なのがデュレーションだ。これは満期までの年数そのものではなく、金利変化に対する価格感応度を表す。デュレーションが15年なら、利回りが1ポイント上がったときの価格下落は概算で15%になる。実際の変化には曲率なども影響するが、長期債ほど小さな金利上昇が大きな評価損になる仕組みは変わらない。

短期債は満期が早く、より高い金利で再投資できる。30年債は低い利率を長く固定する。そのためガンドラック氏の警告は「米国が返済できない」という信用不安より、インフレと国債供給に見合う利回りまで価格が調整するリスクを指している。

誰が増える国債を買うのか

財政赤字が続けば、財務省は借り換え分に加えて新たな国債を発行する。銀行、年金、保険、投資信託、海外中央銀行、家計が吸収するには、他の資産より魅力的な利回りが必要になる。

中央銀行が保有国債を減らし、海外投資家が為替ヘッジ後の利回りを低いと判断すれば、価格を下げて買い手を呼ぶ調整が起きる。国債入札の応札倍率や、落札利回りが入札直前の市場水準を上回る「テール」は、その需要の強弱を映す。

Voicestack の見立て

ガンドラック氏が問題にしているのは、次の政策変更を当てるゲームではない。利下げが始まっても、長期のインフレ補償と期間プレミアムが下がる保証はなく、長期債の値上がりを自動的に約束しないという点だ。

レイ・ダリオ氏が警告した米国債務の循環と、ガンドラック氏の長期金利観は同じ場所に着く。政府が資金を必要とする速度に、民間の貯蓄が追いつかなければ、金利が調整弁になる。

この話の核心

長期国債は「安全な発行体」と「安全な価格」を分けて考える必要がある。元本が返る可能性が高くても、途中の金利上昇で大きな評価損は生じる。

利下げが長期債高につながる条件は、将来の短期金利予想だけでなく、期待インフレと期間プレミアムも下がることだ。財政赤字と国債供給が残る局面では、FRBより国債の買い手が長期金利を決める。