JPモルガン・チェースの2026年第2四半期の純利益は212億ドルだった。ただしVisa株式の交換に伴う46億ドルの利益など、一度限りの要因を除くと169億ドルになる。強い決算だが、最初に見るべき数字が二つある。

Dimon: 複数のリスクが地殻プレートのように水面下で動いている。

報告利益212億ドルには、Visa株関連の46億ドルと、特定の株式投資に伴う10億ドルの利益が含まれる。税引後の影響を除いた純利益が169億ドル、1株利益は6.14ドル、ROTCEは23%だった。継続的な稼ぐ力を見るには、こちらが基準になる。

ROTCEは、普通株主に帰属する利益を、のれんなどを除いた平均有形普通株資本で割った指標だ。銀行が株主の有形資本をどれだけ効率よく利益へ変えたかを示す。23%は高いが、景気循環で市場収入と貸倒費用が動けば低下する。

何が169億ドルを支えたのか

市場部門収入は前年同期比35%増の121億ドル、投資銀行手数料は30%増の33億ドルだった。株式市場部門は86%増え、顧客の取引、株式引受、資金調達が利益を押し上げた。運用資産は18%増の5.1兆ドルで、貸出と預金も伸びた。

貸倒引当費用は25億ドル、実際に回収不能として処理した純貸倒償却は24億ドルだった。カードの純貸倒償却率は3.34%。信用悪化が見えないわけではないが、利益と資本で十分吸収できる範囲にとどまった。

JPモルガンの報告純利益212億ドルから特殊要因を除いた169億ドルと、4つのマクロリスクが収益・信用・資本へ届く経路を示す図
一時利益を除いても収益は強い。リスクは市場収入、貸倒れ、調達コスト、資本の四方向から決算へ入る。

4つのリスクは銀行へどう届くのか

ディモン氏が挙げたリスクは、抽象的な警告ではない。それぞれ決算書の違う場所へ届く。

  • 地政学と戦争:顧客取引を増やして市場収入を押し上げる一方、商品価格急騰や制裁で企業融資の損失を増やす。
  • 粘着的インフレ:金利上昇で利ざやを支える場合があるが、預金金利、住宅ローン、カード返済の負担を増やし、信用コストを遅れて押し上げる。
  • 巨額の財政赤字:景気と企業活動を支える一方、国債利回りを上げ、銀行が持つ債券の評価と顧客の資金調達を圧迫する。
  • 高い資産価格:引受、売買、資産運用の手数料を増やすが、急落すれば市場収入、担保価値、運用残高が同時に下がる。

追い風とリスクが同じ要因から生まれるのが今回の決算の特徴だ。活発な市場とAI投資は現在の手数料を増やす。しかし投資過熱、インフレ、長期金利上昇へつながれば、将来の貸倒れと資産価格調整を作る。

どれだけ耐えられるのか

JPモルガンは普通株等Tier1比率14.1%、損失吸収可能な総資本5900億ドル、現金・市場性証券1.5兆ドルを示した。これらは危機を予測する数字ではなく、損失が出たときに顧客への融資と決済を続ける余力を示す。

ただし巨大な流動性が、そのまま自由に使える現金という意味ではない。規制上必要な流動資産や銀行子会社内に留まる資産も含まれる。資本が厚いことと、損失が起きないことも別である。

Voicestack の見立て

今回の決算は景気後退の証拠ではない。企業投資、雇用、市場活動、貸出はまだ強い。だからこそ、現在の利益をそのまま将来へ伸ばすのも危険だ。市場収入35%増や株式市場86%増は、活動が平常化すれば同じ速度では続かない。

ウォラー氏が示した金融政策の岐路とディモン氏の警戒はつながる。経済が底堅く、インフレが残れば高金利は長引く。銀行は当初利ざやを得ても、家計と企業の返済負担は時間差で信用コストへ表れる。

この話の核心

JPモルガンは一時利益を除いても169億ドルを稼ぎ、23%のROTCEと厚い資本を持つ。現在の数字は、危機が始まったことではなく、複数のショックへ備えられる強さを示している。

ディモン氏の警告の意味は、その強さを安全宣言と誤読しないことだ。地政学、インフレ、財政赤字、資産価格は、現在の市場収入を増やしながら、将来の貸倒れと評価損も作りうる。169億ドルの質を判断するには、収益の伸びと同時に、カード貸倒率、法人引当金、預金コスト、資本比率がどちらへ動くかを見る必要がある。